ITリテラシーの基本知識
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紙の情報は安心感があります。1000年以上前の情報を現在でも見られるわけですから。ただ、内容を読み取れるかどうかは別問題として。
デジタルの情報は、再現性に不安があります。Windows以前のOSで動いていたコンピュータのデータはほとんど再現出来ないでしょう。Windows以降でもたくさんのソフトウェアが開発され消えていきました。消えたソフトウェアのデータを今見ることは困難でしょう。
現在活用されているデジタルデータも30年後や50年後に再現出来るかどうか保証はありません。業務で使っている場合は、将来再現出来ないといろいろ支障が出ることもあるでしょう。だから、紙に印刷しての保存は有効です。
ただ、デジタルデータもシンプルな形式で保存しておけば再現する可能性は高くなります。
紙を意識するとページに縛られます。文書を作成するとき、A4用紙などを意識してしまいます。用紙の大きさを固定すると情報量に関係がないため無駄な余白が生じます。また、書ききれない項目が生じます。
私は、デジタル社会になって、文章はHTML文書に移行すると想像していましたが、未だに紙の概念での文章がほとんどです。
HTML文書とは、HyperText Markup Languageの略で、Webブラウザで表示するためのテキストファイルです。HTML文書は画像や動画をリンクすることが出来ます。
作成するには、ホームページビルダーやHTMLエディタのBlueGriffonやKompoZerなどを使います。
例えば、業務日誌の場合、入力はPCでも印刷して紙で保存してしまうと情報が生かされません。紙に印刷してしまうと検索も出来ないし、保存場所も必要です。また、大きさが制限されているとその枠内に入力しなければならない意識が生まれて情報が少なくなります。
業務日誌をHTML文書で作成すれば、画像や動画も挿入できますし、1ヶ月毎のHTML文書と画像や動画をひとつのフォルダに保存して印刷しなければ、物理的な保存場所が不要ですし、何より検索が可能です。
アルビン・トフラーは第三の波と呼び、情報革命と言いました。
デジタル情報の利点のひとつが、機械が検索出来ることです。その利点を生かさず、アナログ情報と同様、目で探す人の多いこと。紙の上の情報は、人が目で探すしかありませんが、デジタル情報は機械に探させてください。
メジャーなアプリでは、キーボードの [Ctrl + F ]キーで検索窓が開きます。そこに検索ワードを入力すれば一瞬でそのワードにたどり着けます。
過去に保存したファイルを探す場合も、何百ページもあるWord文書を探す場合も、Excelで数値を見つける場合も、PCに検索させるほうが正確で早く楽で、労働生産性も上がります。
余談ですが、PDF文書が2種類あるのはご存知でしょうか。各アプリからPDFにエクスポートされたものと、紙の文書をスキャンしたものです。
前者のPDFは、 [Ctrl + F ]キーで検索可能ですが、後者は画像ですので検索不可です。
機械に探させるためには、ブラインドタッチが出来る環境と能力が必要なので、その環境と能力を手に入れてください。
官公庁の電子申請を使っていると、アナログ時代の印刷書式に拘っています。そのため、フォームへの入力効率がすこぶる悪く、労働生産性の向上になっていません。電子申請より手書きの方がよほど早いと思う場面が何度もあります。
デジタル情報は、入力書式と出力書式を自由に変えられます。良い例が、Web申込みの自動車保険です。対話型で項目ごとに入力し、誤りがあれば次に進めません。ページの概念がありませんから、大きな文字で見やすく、入力フォームが大きく入力しやすく作られています。最後まで入力すれば、見やすい形で一覧として表示されて確認出来ます。契約証書も約款も画面上で確認する形で印刷する必要もありません。
手書きで使ってきた書式に拘るとデジタル化は進みません。今でもよく目にするのが、Microsoft Wordの雛形に入力して提出するというものです。選択肢には、丸を付けるかたちになっています。Microsoft Wordで入力するなら、チェックボックスにすれば楽なのに、図形描画で丸を付けさせる書式です。
そもそもMicrosoft Wordで作ったものをどうするのでしょう。印刷して、それをまたデータベースに誰かが入力するのでしょうか。
古い組織のアンケートなどがこのパターンであります。ブラウザで入力してそのままデータベースに流し込めば、集計業務は飛躍的に高まるのですが、手書き時代のやり方に囚われて、一向に効率化が進んでいません。
紙に印刷することが最終目標とする考えを捨てないと、労働精算背は向上せず、経費削減になりません。
情報の共有をデジタル情報のまま行う運用に変える必要があります。
作業効率を上げるためには、目的に応じた道具が必要です。料理に例えれば、包丁があれば、大抵のことは出来ますが、皮むきをするには包丁よりも皮むき器を使ったほうが安全で楽に早く作業が完了します。
PCでのデジタル情報処理も同様に、目的に応じた道具を使ったほうが、早く楽に正確に作業を行うことが出来ます。
ファイル検索は、エクスプローラーにもその機能はありますが、Everythingという検索アプリを使ったほうが、何倍も早く必要なファイルが見つかりま す。
ファイル名を一括変更する場合も、Flexible Renamer というアプリを使えば複雑な名前への変更も一括で行えます。
アプリにお金を掛けて早く済ませたほうが、人件費の削減になります。
PCで扱うデジタル情報の最小単位はファイルです。そのファイルを保存している場所がフォルダです。紙で例えれば、複数の紙が綴じられたファイルと同等です。フォルダは、棚や引き出しとなります。ここで重要なのは、保存する理由です。将来使う予定があるから保存するわけです。そのために重要なのは、ファイル名です。ファイルを開いて確認しないと中身が分からないようでは必要なときに素早く取り出すことが出来ません。紙を綴るファイルには丁寧に背表紙などにタイトルを記しますが、デ ジタルのファイル名には無頓着な人がほとんどです。ファイル名をきちんとつけないと必要な時に取り出せません。
ファイル名をきちんとつけて保存しておけば、必要な時にPCに検索させて素早く見つけることが出来ます。そのため、「ファイルを付けて保存」は丁寧に行う必要があります。また、人からもらったファイルも後に検索出来る名前に変更しておく必要があります。
ファイル名の長さは、100文字ほどなら問題ないため、検索し易い名前のルールを社内や個人で決めておきましょう。また、日付の形式についても決めておけば検索が容易になります。日付の形式は、半角数字で"yyyymmdd"で表示するのが一般的です。こうしておけば、2023年2月のファイルを検索する場合、 202302 で検索することが出来ます。
フォルダについては、ファイル名で検索するため、細かい分類分けは意味がありません。一括処理するファイルをまとめておくというようなフォルダ単位でのファイル管理をしやすくすることを目的に作成します。例えば、そのフォルダ内のファイル名を一括して変更するとか、そのフォルダ内のファイルを一括で印刷するといった使い方です。
ファイルの基本知識として、ファイルには、サイズ、種類、更新日などがあります。ファイルを操作するアプリは、エクスプローラーです。
ファイルの種類は千差万別ありますが、仕事で主に使うのは、文書や画像ファイルというデータファイルです。データファイルに対して、Microsoft ExcelやMicrosoft Wordなどのプログラムファイルがあります。データファイルはそれだけでは見ることも編集することも出来ません。そのデータファイルに対応するプログラムファイル(アプリ)が必要です。複数のアプリで開けるデータファイルもあれば、決まったアプリでしか開けないものもあります。
ブラインドタッチの基本は、ホームポジションとローマ字入力です。どのキーをどの指が打つか決まっているのでそれを指に覚えさせる反復練習となります。
キーボードの F と J には突起があります。左手の人差し指を F に置き、右手の人差し指を J に置きます。他の指は、自然と別のキーの上に置くことになります。これがホームポジションです。
人差し指は器用なので、1段に並んだキーの2つを担当します。ホームポジションの段では、F と G、J と H です。つまり1段で10本の指が合計12のキーを担当します。それがアルファベットでは3段ありますから、人差し指は、6個のキーを、他の指は3個のキーを担当します。
この決められたキーを指に覚えさせるだけの練習です。意識して続ければ30日もすれば身に付きます。
呼吸をするように文字入力が出来ないとITリテラシーの向上はなく、労働生産性は上がりません。まずは、10本指で入力出来るようになってください。
今年の話ですが、ハローワークに求人登録に行きました。求人条件は、ハローワークインターネットサービスで入力済みです。窓口の担当者は、求人票を印刷してチェックし、修正箇所を指摘し、当方が了承すると修正入力を行いました。それが1本指でゆっくりゆっくり行っていました。ブラインドタッチを習熟していれば、この方の業務がどれだけ楽になっただろうと想像してしまいました。
PCに入力したデータの照合を、一旦プリントアウトして、入力元と入力したデータを人が目で照合する光景を今でもよく見ます。
例えば、納品書を入力し、そのデータをプリントアウトして他の人が納品書と照合して入力間違いがないか確認するという作業です。照合は、PCが得意とする作業ですから、PCにさせることで作業効率が上がります。
1985年頃に勤めていた会社は、30店舗から本部へ納品書が集められ本部で集中して処理していました。入力者を派遣で雇い、1日300枚前後の納品書を入力を2回入力します。1回目と2回目の照合はコンピュータが行い、間違いがあればエラーを表示して修正するという流れでした。
「人が目で照合する」のと「同じものを2回入力する」作業時間を比較すればどちらが効率が良いか明白です。後者では、プリントする費用もかかりません。
このように、運用方法を間違って、PCの導入前より効率が悪くなったと勘違いした会社がどれだけあったでしょう。そうして、IT機器やIT知識に投資しない悪循環が生まれました。
ITは、Information Technology の略称です。これは、コンピュータが発明され、情報を機械が処理出来るようになったことを意味します。
デジタル情報は、従来のアナログ情報とどう違うのでしょう。
アナログ情報からデジタル情報に変換する作業、またはその逆の変換作業に労力と費用がかかります。アナログデータを手入力したり、スキャナーで読み取る作業、デジタル情報タを紙に印刷する作業等です。
そのため、労働生産性を上げるためには、入力から出力までデジタル情報のみを取り扱い、アナログ情報を使わない必要があります。一言で言えば、徹頭徹尾ペー パーレス。
日本の場合、先にワープロが流行りました。そうして、パソコンを使うようになってもワープロとして使う方がほとんどでしたし、今も大勢います。ワープロとパソコンでは、道具としての役割が異なります。ワープロは、活字印刷機であり紙に印刷することが目的の機器です。パソコンは、情報処理機です。デジタル思考を身に着けて、パソコンを情報処理機と して活用出来ないと労働生産性は上がりません。
45年と長くデジタルデータに関わってきた者として、ITリテラシーについての考えを残します。ITリテラシーも範囲が広いので、会社にとって利益を生む内容を主に記す予定です。
従業員のITリテラシーが向上すれば、事務作業の労働生産性が上がり、人件費が削減出来て結果、利益を生みます。
日本人のITリテラシーが低い原因は、使えない人に忖度し過ぎたと私は思います。使えない人のためにと甘えさせて一向に進歩しませんでした。Windows95の発売で国内が湧いていたときに一気にデジタル化に進むべきでした。そうすればその時40歳だった人は、70歳の今も使えているでしょう。しかし、停滞したままなので、40歳だった人は70歳になってしまい習得がさらに厳しくなりました。そうして今もなお、使えない人に忖度しています。
何のためにPCを導入したのか分かっていない企業も多いです。そのため、ハードウェアとソフトウェアを社員に提供し、あとは個々の社員任せでした。それで社員もわからないまま使ってきました。
企業が、PCという道具を使い、事務作業の労働生産性を上げて、人件費を削減して利益を上げるという強い思いがあれば、もっとPCを活用する手段を講じたでしょう。しかしながら、多くの経営者がPCやITのメリットを理解していませんでした。現場では、PCやITで仕事が奪われることを防ごうとした従業員も多かったと思います。
上記を踏まえて、日々の事務作業を楽に早く正確に行いたい社会人や、会社にとって利益を生む使い方を知りたい経営者の方向けにITリテラシーについて日々綴る予定です。